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相続人が納得いかない公正証書遺言がある場合の相続登記

状況

① 相談者Aの母であるBが亡くなった。
② Bは甲土地、乙土地、丙土地、丁土地、それから甲建物、乙建物、丙建物、丁建物を所有していた。
③ Bは公正証書遺言を作成しており、AがBの所有する甲土地と甲建物を相続することが記載され、それ以外の土地・建物はAの妹のCが相続することが遺言書には記載されていた。
④ Aは遺言書の内容に不満があった。

司法書士の提案&お手伝い

① Aの遺留分の金額がどれくらいあるかを計算した。すると、遺言書の記載の内容でAの遺留分相当額は取得されていることがわかった。
② Aには裁判手続きに持ち込んでも必ず取得できる相続分はないかもしれないというアドバイスを行い、遺言書どおりの財産を取得するかどうかの最終的な判断はAに一任したところ、Aが遺言書記載の財産だけでも取得することになった。
③ 住民票除票や不動産の評価証明書などの必要書類を当事務所で取得できることを提案した。
④ 押印書類の発送や到着に関して、相談者であるAとの連絡を密に行った。
⑤ 公正証書遺言があるので、遺産分割協議をせずに相続登記ができることを説明し、相続登記の申請を行った。

結果

① 遺留分についての説明を行うことで、お客様に今後の手続きをどうすべきかを判断する材料を提供し、お客様の疑問を解消することができた。
② 必要書類をすべてこちらでそろえることで、お客様のお手間を省くことができた。
③ 公正証書遺言があったため、スムーズに相続登記をすすめることができた。

納得できない遺言が出てきたとき

納得いかない遺言が出てきた場合はどのように対処すればいいのでしょうか。
自筆証書遺言・公正証書遺言の2種類の遺言ごとに解説いたします。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは本人が、本文の全文・日付・氏名を自筆で書いた書面に捺印したものです。
用紙は何でも構いませんが、パソコンで入力や代筆は認められず、必ず自分で書くことが必要となります。

自筆証書遺言が無効になる場合

自筆証書遺言は上記の通り、手軽でいつでもどこでも書けるものにはなりますが、その反面形式の不備で無効になりやすいという特徴があります。
そのため法律上の決まりに則しているのかどうかを確認し、決まりが守れていなければその遺言は無効であると主張することが出来ます。

公正証書遺言とは

公正証書遺言は、遺言者本人が原則として公証役場に出向き、証人2人以上の立会いのもとで、遺言の内容を話し、公証人が筆記します。
そして公証人は、記録した文章を本人と証人に読み聞かせたり、閲覧させたりして筆記の正確さを確認し、それぞれの署名・捺印を求めます。

これに、公正証書遺言の形式に従って作成した旨を公証人が記載し、署名・捺印して完成します。
なお言葉の不自由な人や耳の不自由な人の場合は、本人の意思を伝えることのできる通訳を介して遺言を作成することができます。

ちなみに、相続人になる可能性のある人(推定相続人)、直系血族、未成年者、受遺者などは、公証証書遺言の証人になることはできません。

遺言の種類について詳しくはこちら>>

公正証書遺言が無効になる場合

公正証書遺言は上記のように証人のもと書かれる遺言なので中々無効になることはありません。
しかし下記のような場合では無効になるケースもあります。

遺言能力が認められない場合

遺言の内容が理解できないようなものであった場合、遺言は無効となります。
ただ原則公証人が立ち会うので場合としては少ないですが、仮に確認漏れなので内容に不足がある場合は無効になることがあります。

口授がされなかった場合

遺言者が公証人に対して遺言の内容を口で伝える「口授」がなされなかった場合無効になる可能性があります。

納得いかない遺言が出てきた時の対処法3つ

①無効を主張する

上記で示した通り、自筆証書遺言や公正証書遺言に限らず、遺言の無効を主張して遺言の効力を失くし改めて遺産分割を進める方法です。

【遺言が無効と認められるケース】
遺言が無効と認められるケースには、遺言の形式自体に不備があるケースや、遺言者の遺言能力などの要件があります。具体的には
・日付がない、特定できない
・遺言者の押印や署名がない
・認知症などの疑いにより遺言能力が認められない
などが考えられます。
②相続人・受遺者全員の同意を得て遺産分割協議を行う

遺言が有効か無効か争うのではなく、相続人全員と受遺者全員の同意を得ることで、公正証書遺言とは違う遺産分割協議を進める方法です。
なお、受遺者とは、遺言によって遺産を譲られる人の中で法定相続人ではない人のことです。

公正証書遺言が有効だったとしても、以下の条件を満たせば遺言と異なる遺産分割協議が可能となります。

・遺産分割協議が遺言で禁止されていない
・相続人全員と受遺者全員が合意している
・遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者が同意している

遺言により、遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者の同意も得る必要があります。

③遺留分侵害額請求を行う

遺言に沿った遺産分割を受け入れて、遺留分侵害請求をする方法もございます。
納得ができないような不公平に感じられる公正証書遺言では、遺留分が侵害されている可能性があるためです。

遺留分とは、一定の相続人に最低限保障される相続財産のことです。
遺留分は遺言によって奪われることはありません。
遺留分が侵害されている場合は、遺留分侵害額請求で取り戻すことが可能です。

遺留分侵害額請求を起こす場合の流れは以下の通りです。
①遺留分侵害額を特定するための財産調査を行う
②配達証明付き内容証明を送る(相続開始から1年以内)
③①②でも決着しない場合には調停の申立て
④①②③でも決着しない場合には訴訟の提起

遺留分侵害額請求に定められた形式はありませんので、口頭で「請求します」と訴えた場合であっても有効となります。しかし追って言った言わないが争点とならないように、配達証明付き内容証明郵便で行使するのがおすすめです。

ただし、遺留分侵害額請求ができる権利には有効期限があります。
 日本の民法に基づき、遺留分侵害請求権の時効は10年間と定められています。この10年間という期間は、相続が開始された日から起算します。(相続開始日とは自身が相続人であるという事を知った日を指します。)
 この期限内に請求を行わなければ、相続人はその権利を失うことになります。したがって、遺留分侵害請求権を行使する場合には、この時効期間を十分に認識しておく必要があります。また、遺留分侵害請求権は複雑な法律問題を含むため、専門的な助言を求めることが望ましいです。

また、遺言自体の無効を主張する場合も、遺留分侵害額請求権の時効は進行します。
遺言の無効が棄却された際に、遺留分侵害額請求権の時効が過ぎてしまうと、遺留分侵害額請求を行うことができなくなります。そのため、遺言の無効と遺留分侵害額請求は同時並行で行う必要があります。

遺留分について詳しく知りたい方はこちら>>

当事務所のサポート内容

当事務所にご依頼いただければ、相続人の調査から遺産分割協議書の作成、およびその受け渡しを、全てサポートいたしますから、慣れない手続きや書類の準備・作成に振り回されることなく、故人を悼む日々を過ごすことができます。

ややもすれば感情的になりがちな遺産分割についても、冷静にかつ円満に解決できるよう、第三者である専門家が法的なアドバイスを行います。相続をきっかけにして、相続人どうしがいがみ合う、いわゆる「争族」にならないように、知恵と知識と経験でサポートさせていただきます。

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この記事を担当した司法書士

司法書士法人・行政書士法人 エムコミュー

代表

小野 圭太

保有資格

司法書士 行政書士 民事信託士

専門分野

相続・遺言・民事信託・不動産売買

経歴

司法書士法人・行政書士法人エムコミューの代表を勤める。 平成25年12月に「司法書士法人・行政書士法人エムコミュー」を開業。相談者の立場に立って考える姿勢で、「ご家族の絆を一番に!」を事務所の理念 にしており、お客様の家族まで幸せを考えた提案をモットーにしている。また、相続の相談件数1200件以上の経験から相談者からの信頼も厚い。


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