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申述期間を1年以上徒過した相続放棄から相続財産管理人選任申立まで行った事例

状況

①相談者Aの子Bが亡くなった。
AがBの死亡の事実を知った時、既にBの死亡後半年以上が経過していた。
③Aは警察からの連絡を受けて、Bの死亡を知るに至った。
④Bの相続人は父親A、母親C、実弟Dの3名であった。
⑤Aらは、孤独死であったBのものを葬儀会社紹介の清掃業者へ依頼し処分してしまっていた。

司法書士の提案&お手伝い

Bには所有マンションのローンが残っていたことが分かっていたが、その他の負債については何も分からない状態であった。そのため、信用情報機関に開示請求をかけることで、Bの負の財産について調査をすることができる旨お伝えした。

②Bが団体信用保険に加入していた可能性があり、面談時にその後の手続きについて金融機関へスピーカーフォンを用いてお客様と共に電話連絡を入れ、その後の手続きについて話を聞き取り、Aら相続人の皆様へ分かりやすく解説をした。信用情報調査が終了するまで、相続をするか、相続放棄をするかについての結論を出すことを少し待ち、負債が多いようであれば相続放棄の手続きをすることとして、初回の面談は終了した。

③信用情報開示請求の結果、負債の方がはるかに多かったため、Aらは相続放棄の手続きを取ることとなった。しかし、この時点でBの死亡後1年以上が経過しており、A及びCBの死亡を知ってから半年以上が経過してしまっていた。

④しかし、上申書等を作成することで相続放棄が認められる余地があると判断し、裁判所に対して相続放棄の申述をしてみることに決定した。

結果

①マンションのローンについては、団体信用保険によって返済できるものの、返済が滞っていた部分について遅延損害金が発生していることが面談時の電話によって発覚した。

②信用情報機関への開示請求によってその他にも借入金が多く存在していたことが分かった。

③そのため、相続放棄の手続きを取ることに決定したが、「相続の発生を知った時」から3ヶ月以上の期間が過ぎていたため、上申書を作成し、Aからのいただいた葬儀会社の情報からBの自宅を清掃した清掃業者を探し出し、清掃業者にもお願いをしたうえで書面に署名・押印をいただき、処分したBの所有物には財産的価値がなかったことを証明した。

④ACの相続放棄の申述が受理された後、実弟Dの相続放棄の申述も受理してもらうことができた。

⑤相続放棄の申述が認められたものの、B所有マンションの管理はAが継続して行わなければならず、Aは不動産管理費の支出を自己の財産から継続して行っていた。そして、団体信用保険によって消えた抵当権の抹消登記をするために、B名義から他のものへ変更する必要があったことなどから、相続財産管理人選任申立を行う必要があった。

⑥Aから聞き取りをした事実を元に、相続人全てが相続放棄をしたためBに相続人がいないこと、Aは高齢であるため不動産管理費用の継続的な支出が難しいこと等を記載した相続財産管理人選任申立書を作成し、裁判所へ提出をした。

⑦その結果、無事に相続財産管理人の選任がなされ、Aは不動産管理からも解放された。

⑧Aらが当事務所にご相談に来ていただいてから約半年で、相続放棄を3件・相続財産管理人の選任申立業務までをかなりスピーディーに行うことができ、お客様に満足していただくことができた。

司法書士のポイント

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に相続放棄の申述をしなければなりません(民法915条1項。以下、法令名無きものは民法を指す)。

それでは、915条1項にいう「自己のために相続の発生を知った時」とはいかなる場合を指すのでしょうか。

原則的には①相続開始の原因である被相続人が死亡した事実を知った時、②自分が法律上の相続人となった事実を知った時であると解されています。

それでは「3ヶ月」はどの時点から数え始める必要があるのでしょうか。

最高裁判所の判例によると、「原則として、相続人が前記各事実を知った時から起算すべきものであるが、 相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となつた事実を知つた時から三か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法九一五条一項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である。」(最判二昭59427民集386698頁)との判断をしています。

この判例によると、相続人において特別な事情が認められる場合には、相続人保護の必要性から915条1項の熟慮機関の起算点(3ヶ月の起算点)である「自己のために相続の開始がったことを知った時」について弾力的な解釈がなされ得るのだと考えることができます。

しかしながら、どの程度までその解釈が許されるのか、どのような理由であれば起算点を後ろにずらすことができるのかに関しては、高度の法的知識が必要となります。

素人的な安易な法的判断をしてしまい、思わぬ負債を相続することになってしまうかもしれません。

相続放棄の検討をされる場合には、出来るだけ早い段階で専門家のもとを訪ね、適切な方法・判断によって手続きを進めていく必要があるのです。

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この記事を担当した司法書士

司法書士法人・行政書士法人 エムコミュー

代表

小野 圭太

保有資格

司法書士 行政書士 民事信託士

専門分野

相続・遺言・民事信託・不動産売買

経歴

司法書士法人・行政書士法人エムコミューの代表を勤める。 平成25年12月に「司法書士法人・行政書士法人エムコミュー」を開業。相談者の立場に立って考える姿勢で、「ご家族の絆を一番に!」を事務所の理念 にしており、お客様の家族まで幸せを考えた提案をモットーにしている。また、相続の相談件数1200件以上の経験から相談者からの信頼も厚い。


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