知らないと損をする!?「遺産放棄」と「相続放棄」の違い
「遺産放棄」と「相続放棄」
「遺産放棄」と「相続放棄」は、混同されることが多いですが実はまったく別のものです。
「遺産放棄」は、個々の財産に対して、これについては権利を放棄する、というもので、相続人としての地位まで失うものではありません。
一般的には「遺産分割協議書」というものを作成し、その中で財産についての放棄の意思を明らかにします。
「相続放棄」は、家庭裁判所に申述をすることによって強制的な法律的効力が生じます。
「相続放棄」をした相続人は、「はじめから相続人でなかった」ことになり、相続人としての地位を失います。
遺産放棄
遺産放棄は相続権自体を放棄することではなく、特定の遺産について放棄することを主に指します。
裁判所で手続きする必要はなく、「実家はお兄さん(またはお母さん)が相続すればいい」のように遺産分割協議などで特定の人に遺産を譲ることこそがこの遺産放棄です。
実家を兄と弟で分割する場合は、法定相続分は1/2ずつになりますが、相続人で話し合った上で法律と異なる分割をしても良いため、特定の物に関しては放棄するということがよく起きます。上記のケースで言うと、弟は兄に実家という遺産を譲った=実家という遺産を放棄したことになります。
遺産放棄の特徴として、特定または全部の遺産は放棄したけれど相続権自体を放棄はしていないということです。
なお、被相続人が住宅ローン等の負債を抱えていた場合には、その負債までは遺産放棄では当然に免除されません。
事例のような実家はお兄さんが継ぐ(相続する)という形で話し合いが決まっても、他の遺産を継ぐことはありますので預金は欲しいというふうにまとめることも可能です。
- ◆特定または全部の遺産を「放棄」「譲渡」するということ
- ◆手続きは相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で
- ◆必要書類等は印鑑証明書や実印
- ◆「遺産分割協議書」を作成するのが一般的
- ◆被相続人の負債は放棄できない
相続放棄
相続放棄とは、裁判所で手続きをして相続の権利そのものを放棄することをいいます。遺産放棄は相続人同士の話し合い(遺産分割協議)の中で行われますが相続放棄は家庭裁判所での手続きが必要です。
また、特定の遺産については相続しないけれど他の遺産は相続するということもできません。実家は全て兄に相続してもらっていいけど預金は欲しいということはできません。実家も預金も土地も負債も全て相続しないという手続きが相続放棄です。
相続放棄をすると相続権自体を放棄するので相続はできません。また、最初から存在しなかった相続人になります。
相続人ではないのですから相続の話し合い(遺産分割協議)に参加する必要もありません。
- ◆最初から相続人ではなかったことにする
- ◆特定の遺産だけではなく遺産全てを相続しない
- ◆家庭裁判所でしか手続きができない(書類の提出要)
- ◆必要書類は相続放棄の申述書他
この記事を担当した司法書士
司法書士法人・行政書士法人 エムコミュー
代表
小野 圭太
- 保有資格
司法書士 行政書士 民事信託士
- 専門分野
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相続・遺言・民事信託・不動産売買
- 経歴
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司法書士法人・行政書士法人エムコミューの代表を勤める。 平成25年12月に「司法書士法人・行政書士法人エムコミュー」を開業。相談者の立場に立って考える姿勢で、「ご家族の絆を一番に!」を事務所の理念 にしており、お客様の家族まで幸せを考えた提案をモットーにしている。また、相続の相談件数1200件以上の経験から相談者からの信頼も厚い。