かわいい孫への生前贈与をするには
生前贈与とは
生前贈与とは文字通り、生きている間(生前)に財産をあげる(贈与)ことを言います。
その一番の目的は、生きている間に相続財産を減らすことで、亡くなった時に発生する相続税を減らすことができることです。
また、早いうちに財産をあげることでもらった人は使いたい時にその財産を使うことができるので、例えば小さいお孫さんがいる家庭などに贈与をすると、お金がかかる時期に財産を受け取ることができますので教育費に使えるなど、とても効果的です。
非課税贈与
生前贈与には基本的に贈与税がかかります。
ただし日本では65歳以上の人が国内資産全体の6割を保有しているという状況ですので、若い世代に資産を移行する目的で、特定の目的においては、一定額までは贈与しても贈与税がかからないという非課税制度を設けています。
生前贈与の主な対象は「多額の金融資産や不動産を持つ高齢者」で、目的は「所有する資産の一部を早期に現役世代に移す」ことにあります。
配偶者や子・孫への非課税での贈与を増やすため、国は「暦年贈与」「夫婦間で居住用の不動産を贈与した時の配偶者控除」「住宅取得資金贈与の特例」「教育資金一括贈与の特例」「結婚・子育て資金贈与の特例」の5つの制度を設けています。
非課税で贈与する方法は5つ
1.暦年贈与
贈与税は、一人の人が1年間(1月1日~12月31日)に贈与された金額に対し課税しますが、110万円までは基礎控除として差し引くことができます。これを一般に「暦年贈与」と言います。1年間に受け取った資産の合計が110万円以内であれば贈与税はかかりませんし、申告の必要もありません。
暦年贈与を利用する人は多いのですが、相続段階で「相続税対策ではないか」として税務署から贈与を否定されることも少なくないようです。その対策としてあえて111万円を贈与して贈与税1,000円(=(111万円-110万円(基礎控除))×贈与税率10%)を納税し、贈与の証拠を残す人も多くいます。
利便性が高く利用者が多い「暦年贈与」は、税務署が否定できないよう細心の注意を払って贈与の足跡を残す必要があります。ポイントは次の4つです。
・毎年一定日に一定額の贈与はしない(=振込額や振込日を変える)
・銀行振り込みなどで贈与の記録を残す
・贈与する相手の通帳や印鑑を自分で保管しない
・贈与する相手に贈与することと贈与方法を伝えておく
相続が発生するとさかのぼって3年間の贈与はなかったものとして相続財産に組み入れられます。
したがって、「身体の具合が悪くなったから急いで暦年贈与」というのでは相続対策にならない可能性があります。
2.夫婦間で居住用の不動産を贈与した時の配偶者控除
婚姻期間が20年を超える夫婦間で居住用不動産または居住用不動産を取得するための資金を贈与する場合は、2,000万円までは配偶者控除できる(=非課税)という特例です。
前出の基礎控除110万円を加算し、2,110万円まで利用することができます。
同じ配偶者からのこの贈与は一生に一度だけの適用です。
ただし、贈与を受けた不動産に翌年3月15日までに住み、その後も住み続ける必要がありますので注意しましょう。
また税務署への申告が必要です。
3.住宅取得資金贈与の特例
20歳(贈与を受ける年の1月1日の年齢)以上の子、もしくは孫が、自分が住むための家屋の新築・取得・増改築等のために父母や祖父母から資金の贈与を受けた場合、最高1,200万円まで非課税になる制度です。
この特例を利用するにあたっては、贈与を受ける人のその年の年収が2,000万円以下であることの他に、取得する住宅の床面積や耐震などが一定の要件を満たす必要があります。
非課税の適用を受けるには、贈与を受けた翌年2月1日~3月15日の間に、贈与税の申告書と一定の書類を税務署に提出しなければいけません。
4.教育資金一括贈与の特例
父母や祖父母が、30歳未満の子や孫に教育資金を一括贈与する場合は、1,500万円(塾やお稽古ごとのような学校以外への支出は500万円)までを非課税とする制度です。受取人が30歳になった時に残額があった場合は、贈与税が課されます。2019年3月31日までの贈与が対象です。
なお、この制度を利用するには信託銀行・銀行・証券会社などの金融機関と契約し(1金融機関1営業所に限定)、領収書を金融機関に提出する必要があります。
金融機関からの支払いには、前払いと後払いがありますので、金融機関を選択する際に確認しましょう。
教育資金贈与制度の3つのメリット
【メリット1】 1日で大型贈与ができる!
孫4人に1,500万円ずつ贈与すれば、一日で総額6,000万円の相続財産を減らす効果が得られます。高齢者や病気を抱えている富裕層にとっては、大型贈与が一日でできてしまうメリットは大きいでしょう。
【メリット2】 3年以内の生前贈与加算の対象外に!
相続人に生前贈与すると、相続発生の前3年以内の贈与は相続財産に取り込んで相続税を計算することとする“生前贈与加算”の対象にならない点は大きなメリットの一つです。子や孫養子に贈与したあとすぐに贈与者(両親、祖父母など)が亡くなっても、(3年以内の)生前贈与加算の対象にならず、安心です。祖父母が病で重篤であっても、意識がしっかりしており、贈与できるなら、この教育資金の贈与は相続対策として大いに有効です。
なお、贈与を受けた資金は30歳になるまでに使い切れば、贈与税はかかりません。逆に、30歳時点でまだ残った預金残高があれば、それには通常の贈与税がかかってくることになります。
【メリット3】 暦年贈与とのセットで利用可能!
贈与税の基礎控除(110万円)を用いた暦年贈与とこの教育資金の贈与をセットで利用できるのも魅力です。信託銀行へ1,500万円送金し、同時に孫本人の口座へ110万円送金すれば、合計1,610万円を非課税で贈与できるというわけです。
教育資金はどこまでOK?学校へ支払う教育資金とは?
上限1,500万円の対象範囲は、学校へ支払う入学金、授業料、入試の検定料や学用品費、修学旅行費、給食費などです。学校はインターナショナルスクールや保育園、海外の教育施設も対象となっています。
学校以外へ支払う資金の範囲は?
上限500万円となる教育資金の対象範囲は、次のようなもので思いの外範囲が広いようです。
学習塾、水泳教室の指導者へ支払う費用
塾などの施設利用料、スポーツ、ピアノなどのための指導の対価
スポーツ、ピアノなどに使用する物品で、指導者を通じて購入した場合の費用
学校等が認めた教材費で業者などへ 支払うもの
5.結婚・子育て資金贈与の特例
20歳から50歳未満の子や孫に対し、結婚や子育ての資金を父母や祖父母が贈与する場合、1,000万円(結婚に対しては300万円)までは非課税とする制度です。2019年3月31日までの贈与が対象です。50歳に達した時に残金があった場合は贈与税が課されます。
この制度を利用する場合は、教育資金の一括贈与と同じく金融機関に専用の口座を開設し、領収書を金融機関に提出する必要があります。また「教育資金の一括贈与の特例」と併用することができます。
孫への生前贈与のまとめ
様々な非課税枠があるので迷ってしまうかもしれませんが、お子さんやお孫さんと話し合うことで、どれをどのくらい活用すべきかが見えてくるのではないでしょうか。
生前贈与の中でも特に祖父母からの贈与は、認知症や病気のリスクも考えなくてはならず、孫がかわいいからといってやみくもに贈与してしまっては、自分の生活も苦しくなってしまいます。
また、まだ大金を持ったことのない孫がいきなり大金を持つと、金銭感覚を狂わせてしまうこともあります。
節税だから、孫のためだから、といって安易に贈与せず、周りと相談してきちんと計画を立ててから贈与することが大切です。
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この記事を担当した司法書士
司法書士法人・行政書士法人 エムコミュー
代表
小野 圭太
- 保有資格
司法書士 行政書士 民事信託士
- 専門分野
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相続・遺言・民事信託・不動産売買
- 経歴
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司法書士法人・行政書士法人エムコミューの代表を勤める。 平成25年12月に「司法書士法人・行政書士法人エムコミュー」を開業。相談者の立場に立って考える姿勢で、「ご家族の絆を一番に!」を事務所の理念 にしており、お客様の家族まで幸せを考えた提案をモットーにしている。また、相続の相談件数1200件以上の経験から相談者からの信頼も厚い。