農地の相続はどのように行うのか
農地を相続することになったら
「父が歳を取りずっと放置していた田舎の田んぼを自分が相続することになった。どうすれば良いか?」といった事がよくあります。
不動産の相続では、放置されていた田畑や空き地などを相続する場合があります。株や債券なら保有するか売却するかの判断は比較的し易いですし、売却も不動産よりも容易にできます。しかし、農地などの不動産はどうして良いか分からない方が多くいらっしゃいます。
田んぼや畑などの「農地」に関する、少し特殊な不動産を相続していた時に何をどうすればよいかをご説明致します。
農地の特徴
まず、農地は、他の土地とは何が違うのでしょうか?
農地は農地法という独自の法律があります。これにより農地の売買が制限されたり、農地から宅地への転用に許可が必要だったりします。
なぜ農地だけ独立した法律があるかと言うと「日本の食料の安全供給」のためです。
極端な話、日本の農地全てを宅地にしたり、農家以外の人に勝手に売られたりしてしまえば、日本国内で米の生産が出来なくなってしまいます。そのため、米などの農作物の生産を守るために農地法があるのです。
農地の名義変更について
農地の名義変更を行う時には、農地法の許可が必要なケースがあります。
なぜなら前項で申し上げた通り、農地を自由に手放せるとしてしまうと、農業を安易にやめる人が増えて、日本の食料自給率が下がってしまうからです。そこで農地を簡単に手放せない(名義を変更させない)ために、農地法の許可がないと名義変更できないようにしているのです。
しかし、農地の所有者が死亡して農地の相続が発生した場合、農地を相続する際には農地法の許可は不要となります。
あくまで相続であり、意図的に農家を辞めようという事ではないからです。
注意点は、遺言書が存在し遺言書の内容で法定相続人以外の第三者が相続する場合は、農地法の許可が必要になります。
農地の相続は許可は不要だが、届け出は必要
改正農地法H21年12月15日施行により、法定相続人が相続する場合には農地法の許可は不要ですが、「届出」は必要になりました。
農地を相続する時は、農業委員会への届け出る必要があり、期限も相続発生から10か月以内と決まっています。これを怠ると、10万円以下の罰金が課せられる場合がありますので注意しましょう。
これは農地を相続したものの、長期間そのまま放置されることを防ぐためです。
農地を放置されると、誰の農地か分からなくなる「耕作放棄地」になってしまうからです。
耕作放棄地というのは、社会問題になりつつあります。
そのため、農地を相続したときはできるだけ早めに農業員会へ届け出をしてください。
農地法(抜粋)
(農地又は採草放牧地についての権利取得の届出)
第3条の3
農地又は採草放牧地について第三条第一項本文に掲げる権利を取得した者は、同項の許可を受けてこれらの権利を取得した場合、同項各号(第十二号及び第十六号を除く。)のいずれかに該当する場合その他農林水産省令で定める場合を除き、遅滞なく、農林水産省令で定めるところにより、その農地又は採草放牧地の存する市町村の農業委員会にその旨を届け出なければならない。
2 農業委員会は、前項の規定による届出があつた場合において、その農地又は採草放牧地の適正かつ効率的な利用が図られないおそれがあると認めるときは、当該届出をした者に対し、当該農地又は採草放牧地についての所有権の移転又は使用及び収益を目的とする権利の設定若しくは移転のあつせんその他の必要な措置を講ずるものとする。
第69条
第三条の三第一項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。
農地の相続の流れ
農地を相続したら、まずは「遺言書」を確認しましょう。
その後に、相続登記(名義変更)の手続きをします。勿論、相続人が自分以外にいないかの確認や遺産が他にないかなどの確認は必要です。今回は、相続人は1人で、遺産も農地のみの場合を例にあげてご説明致します。
1.遺言書があるかを確かめる
相続が発生したら、まず遺言書の有無を確かめましょう。
遺言書が残っている事が知らされていない場合には確認が必要です。なぜなら前項にあるように、もし相続人が第三者(本来相続人にならない人)であれば、農地法の許可が必要になってくるからです。
2.農地法の届出について
今回の例にあげたケースですと、相続人は子である相談者ですので、農地法の許可はいらず届出のみになります。
具体的な届出の方法は以下の通りです。(農地法第3条の3第1項の規定による届出)
<概要>
・届出人:相続等により農地を取得した人
・届出期限:農地取得を知った日から概ね10ヶ月以内
・届出先:農地が所属している農業委員会
<届出に必要な情報>
・権利を取得した者の氏名・住所
・届出に係わる土地の所在等(所在・地番、地目(登記簿・現況)、面積、備考)
・権利を取得した日
・権利を取得した事由
・取得した権利の種類及び内容
・農業委員会によるあっせん等の希望の有無
特別用意するものとしては、不動産の登記簿謄本が必要です。
※また、この届出制度には、「耕作放棄地になるのを防ぐ」以外にもう一つの目的があります。それは、相続によって農地等を取得した人が、その農地等を利用できない場合、 農業委員会が貸借のあっせん等を行うという目的です。農業委員会では、届出があった農地について、キチンと利用されるかを調査します。調査の結果によっては、届出をした相続人に対し、 貸し借りのあっせんや相談などを行います。
農地の相続税と納税猶予制度について
相続によって農地を取得した時には、一般の土地と同様、相続税が課税されます。しかし、農地を相続した相続人が農業を続ける場合には、納税についての特例があります。
それは取得した農地等の価額のうち、農業投資価格による価額を超える部分に対する相続税を猶予するというものです。わかりやすく言えば、相続で農業を引き継ぐにあたって新たな設備投資をしたら、相続税を猶予しますとうことです。
さらにその猶予された税金は、次の内どれかに該当した日に免除されます。
・その農地の相続人が死亡した場合
・相続してから20年間農業を継続した場合
・農地の全部を農業後継者に一括生前贈与し、その贈与税について納税猶予の特例を受ける場合
■納税猶予を受けることが出来る人
次の要件に該当していることを、農業委員会が証明した相続人にかぎられます。
①被相続人が死亡の日までに農業経営を行っていた場合、または、相続人に生前に一括贈与をした場合 ※被相続人は、個人に限る
②農業相続人が、被相続人から相続または遺贈によって取得した農地について相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後引き続いて農業経営を行うものと認められる場合
※以上の要件に該当していることを、農業委員会に証明してもらう必要があります。
■対象となる農地等とは
「農地等」・・・農地、採草放牧地及び準農地で、これらの上に存する耕作権も含まれる。
(市街化区域においては、生産緑地地区内に所在する農地のみ適用)
① 被相続人から相続または遺贈によって取得した農地等であること
② 申告期限内に遺産分割協議によって分割された農地等であること
③ 被相続人が農業の用に供していたものであること
■いつまで納税が猶予されるか
納税が猶予される期限は、次のうちいずれか早い日
① 農地を相続した農業相続人が死亡した日
② 農業相続人が、贈与税の納税猶予が認められる生前一括贈与をした日
③ 相続税の申告期限後、20年間農業を継続した、その20年目の日
※農地についてはいろいろな優遇制度がありますので、農地を相続される方は詳しく調べてみることをおすすめします。
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この記事を担当した司法書士
司法書士法人・行政書士法人 エムコミュー
代表
小野 圭太
- 保有資格
司法書士 行政書士 民事信託士
- 専門分野
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相続・遺言・民事信託・不動産売買
- 経歴
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司法書士法人・行政書士法人エムコミューの代表を勤める。 平成25年12月に「司法書士法人・行政書士法人エムコミュー」を開業。相談者の立場に立って考える姿勢で、「ご家族の絆を一番に!」を事務所の理念 にしており、お客様の家族まで幸せを考えた提案をモットーにしている。また、相続の相談件数1200件以上の経験から相談者からの信頼も厚い。