【司法書士が解説!】遺言執行者とは?就任するとどうなるの?
公正証書遺言の件数の増加や自筆証書遺言に関する制度改正により、遺言書が身近な存在になってきています。
そのため、「遺言執行者」に指定されることは、決して珍しいことではなくなってきました。
2019年1月には自筆証書遺言の方式緩和、2020年7月には自筆証書遺言保管制度(法務局による保管)が創設され、益々遺言書のニーズは高まっている状況です。
遺言執行者とは?
「遺言執行者」とは、「遺言執行を行う者」のことであり、多くの場合は遺言者が遺言書において指定します。
複数の者や法人も遺言執行者になることができます。未成年者など、遺言執行者になることができない人もいるので、選任には注意が必要です。
また、遺言執行者に受遺者(財産を受け取る人)が選ばれる場合には、遺言書が原因で逆に揉めることもあり、遺言執行者を誰にするかも検討が必要です。
遺言執行者の義務
遺言執行者には法で定められた以下の義務が主に課されています。
【民法】
第1007条第2項
遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
第1011条第1項
遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
第1012条1項
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
第1012条第3項
第644条から第647条まで及び第650条の規定は、遺言執行者について準用する。
遺言執行者の権限と役割
遺言執行者は民法で「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権限」が認められています。以下が、遺言書で与えることができる遺言執行者の代表的な権限です。
●相続人調査・相続財産調査
●財産目録の作成
●貸金庫の解錠、解約、取り出し
●預貯金払い戻し、分配
●株式の名義変更
●自動車の名義変更
●不動産の登記申請手続き
●寄付
●子どもの認知
●相続人の廃除とその取り消し
●保険金の受取人変更
遺言執行者は独立した立場で、職務を遂行しなければなりません。相続人の廃除や取り消し、子どもの認知は遺言執行者にしかできない行為です。また法改正前は、「法定相続人に相続させる」という遺言があったときには遺言執行者単独で相続登記できないなどの制限がありましたが、2019年7月1日に行われた法改正によって、遺言執行者が単独で登記申請できるようになりました。
一方、遺言執行者ができないことのひとつに相続人の相続税申告があります。相続税の申告は相続人の義務であり、遺言執行者の権限には含まれません。
遺言執行者がやることの手順
以下の流れで業務を行います。
①自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で検認手続き
②遺言執行者就職通知書(※)と遺言書の写しを送付
③遺言事項の執行
④完了報告
※遺言書で遺言執行者に指定された者が実際に就任するかどうかは自由です。遺言執行者就任を承諾するか否かを相続人に対して通知します。
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この記事を担当した司法書士
司法書士法人・行政書士法人 エムコミュー
代表
小野 圭太
- 保有資格
司法書士 行政書士 民事信託士
- 専門分野
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相続・遺言・民事信託・不動産売買
- 経歴
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司法書士法人・行政書士法人エムコミューの代表を勤める。 平成25年12月に「司法書士法人・行政書士法人エムコミュー」を開業。相談者の立場に立って考える姿勢で、「ご家族の絆を一番に!」を事務所の理念 にしており、お客様の家族まで幸せを考えた提案をモットーにしている。また、相続の相談件数1200件以上の経験から相談者からの信頼も厚い。