相続回復請求権はどんなときに主張できる?
相続人の相続権を相続欠格や廃除により相続権がないにもかかわらず相続権を主張して相続財産を占有する人(表見相続人)が侵害している場合、相続人(真正相続人)には、その侵害者に対して、相続財産の回復を図るという権利(相続回復請求権)が認められています。
(相続回復請求権)
民法第884条
相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様とする
例えば、親子関係はないのに、子として相続人となっていたり、相続欠格者であるのに不動産や預貯金等を占有していたり、自らの相続分を越えて財産を占有している他の相続人などが他の相続人がいたとします。
これらの者に対して本来の相続人が返還等の方法により相続財産の回復を図るという権利が相続回復請求権になります。
◆表見相続人◆
相続欠格者や本来相続人でないにもかかわらず真正の相続人かのように装っている者のこと。
相続放棄をした後に相続権があると主張する場合も表見相続人となります。
◆真正相続人◆
表見相続人による相続権の侵害によって、本来相続することができる遺産の占有を失っている人のこと。
相続回復請求権を行使できる人(請求権者)
真に相続権を有している相続人(真正相続人)また相続人以外の被相続人の包括承継人も相続回復請求権の請求権者となるとされています。
例)
・包括受遺者
・相続分の譲受人
・遺言執行者
・相続財産管理人
など
また真正相続人の相続人も相続回復請求権を有するとされています。
相続回復請求を誰に対してするか?
・表見相続人
・他の共同相続人
本来相続人でない表見相続人と、共同相続人のうちの一人又は数人が相続財産のうち本来の相続持分をこえる部分について当該部分の表見相続人として当該部分の真正共同相続人 の相続権を否定しその部分もまた自己の相続持分であると主張してこれを占有管理し、真正共同相続人の相続権を侵害している場合にも適用されます。
相続回復請求権の時効について
相続回復請求権は、真正相続人又はその法定代理人が表見相続人が相続をして権利を侵害していることを知った時から5年で消滅し、また知らなかったとしても相続の開始から20年間行使しなくても時効により消滅します。
共同相続人による侵害の場合の時効について
共同相続人の1人が自分だけで相続財産を占有し、20年以上経過した場合の時効については、他の相続人の権利を侵害している相続人が相続権を侵害していることを知らず、そう信じることに合理的理由がある場合(善意・無過失)にのみ期間制限(時効)が適用されるとされています。
侵害者が相続財産の自分だけ多くの相続分を受け取り、遺産分割協議をせず自分1人の名義にしたような場合(悪意)は、相続から20年以上経過していても相続回復請求権の消滅を主張できないとされています。
【最高裁(昭和53年12月20日)判例】
相続回復請求権の具体的な方法は?
相続財産の返還請求は書面(内容証明郵便など)にて意思表示を行うという方法と、話し合いで解決しない場合には裁判所への調停の申し立てにて行う方法があります。
この記事を担当した司法書士
司法書士法人・行政書士法人 エムコミュー
代表
小野 圭太
- 保有資格
司法書士 行政書士 民事信託士
- 専門分野
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相続・遺言・民事信託・不動産売買
- 経歴
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司法書士法人・行政書士法人エムコミューの代表を勤める。 平成25年12月に「司法書士法人・行政書士法人エムコミュー」を開業。相談者の立場に立って考える姿勢で、「ご家族の絆を一番に!」を事務所の理念 にしており、お客様の家族まで幸せを考えた提案をモットーにしている。また、相続の相談件数1200件以上の経験から相談者からの信頼も厚い。