自動車の相続手続き(名義変更)
自動車の所有者が死亡した場合の相続による名義変更手続き
自動車は動産なので、民法178条の規定により引渡しを受ければ、他の者に権利を主張でき、名義変更の必要性はないとも考えられますが、他の動産とは違い自動車は道路運送車両法5条1項により、他の者に権利を主張するためには登録しなければなりません。そのため相続により権利を取得した時も、しっかりと自動車名義変更をしておく必要があるのです。
車やバイクももちろん遺産の一つです。遺言書がなければ法律で決められた割合に従い、相続人全員で共有することになりますが、実際は遺産分割協議を行い、相続人のうちの誰か一人が相続するのが一般的です。
それは、その相続人が引き続き車を使用する場合はもちろんですが、売却してそのお金を相続人で分ける場合も、売却する為には先に相続手続きをしておかなければならないからです。
年式が古く、車に価値がなく廃車を考えている場合も、まずは一旦相続手続きを行い、そして新所有者が廃車の手続きをしなければなりません。
つまり、その残された車やバイクを引き続き使用する場合も、売却する場合も、廃車にする場合も、いずれにしても必ず相続手続きをしなければならないということです。
手続きが必要なことは普通自動車でも軽自動車でも二輪車の場合でも同じです。しかし、手続きをせず放置しておいたとしても何か特別な罰則があるわけではなく、故障していなければもちろんエンジンはかかりますので、どうしても手続きを先送りにしてしまいがちです。
しかし、故人名義のままでは他人に譲ることも売ることも廃車にすることもできず、まして事故など起こした場合は取り返しのつかない事態になる可能性がありますので、出来るだけ早めに手続きを済ませておくことをおすすめします。
※ 上記は、個人間での譲渡や相続人が引き続き利用することを前提としております。相続発生後に買取業者に売却されることを検討されているようでしたら、その場合には全て手続きを買い取り業者に任せてしまうことも手段の一つです。
個人が所有してた車・バイクを相続人が相続する場合
相続人であれば、その車の全部または一部を相続する権利を当然に有します。しかし、所有者によって手続き方法がそれぞれ違います。そこでまず誰が所有者になるのか明確にする必要があります。
(1)相続人が複数人である場合
相続人が複数人いる場合、相続人全員で遺産分割協議をおこない、権利を承継する相続人を決めるか、相続人全員が法定相続分による共同相続することになります。
自動車名義を共有にするとその後の手続きをする時、名義人全員でしなければならないなど不都合が生じるので、通常は前者の方法で手続きをおこなうことがほとんどです。
遺産分割協議の方法で手続きする場合、遺産分割協議書を作成しますが、そこには、車名・形式、自動車登録番号、車台番号を記載して相続対象となる自動車を特定します。
また、手続きの際、相続人全員の印鑑証明書が必要となるので、遺産分割協議書に相続人全員が署名し、実印で捺印しなければなりません。
(2)相続人が単独である場合
相続人が一人しかいない場合は、基本的にその相続人が被相続人の権利義務をすべて承継します。そのため相続財産である自動車もその相続人名義に移転登録します。相続人が複数人いる場合のように遺産分割協議をする必要もありません。
(3)相続人以外の人に権利を承継させる場合
亡くなった人が所有していた自動車の権利を相続人以外の人に承継させたい場合もあるでしょう。このような場合、被相続人から相続人名義に移転登録し、その後相続人から権利を承継する相続人以外の人に移転登録するという二段階の手続きが必要になります。
しかし二つの手続きに必要な書類が整っていれば、二度する必要はなく、一度の機会で済ませてしまうことが可能です。この手続き方法のことをダブル移転といい、相続財産である自動車の権利を相続以外の人に承継させる時によく利用します。
自動車相続手続きの主な必要書類
(相続人が複数人いて、そのうちのお一人が相続される場合)
被相続人(亡くなった方)が所有していた自動車の相続手続きは、新たに所有する相続人の住所地を管轄する陸運局で行います。
1.故人の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本
2.相続人全員の記載がある戸籍(除籍)謄本
3.相続人全員の戸籍謄本
4.名義を取得する相続人の印鑑証明書
5.遺産分割協議書
6.車検証
7.車庫証明書 ※ 不要な場合あり
車庫証明について
故人と同一の車庫を、故人と同居していた相続人が、引き続き利用する場合は、車庫証明が不要です。
同一の車庫を利用する場合でも、住所が違うときは、車庫証明が必要になります。
車庫証明は、管轄の警察署で取得します。
1.自動車保管場所証明申請書(正・副)
2.保管場所標章交付申請書(正・副)
3.自動車保管場所届出書
4.保管場所標章再交付申請書(正・副)
5.保管場所の所在図・配置図
6.保管場所使用権原疎明書面(自認書) 駐車場が自宅の敷地内にあるとき
7.保管場所使用承諾証明書 賃貸駐車場を利用しているとき
また、ナンバープレートの管轄が変わるときは、 新しいナンバープレートに付け替えなくてはなりません。
名義変更せずに放置しておいた場合のデメリット
車の所有者がお亡くなりになったとき、その瞬間から車のエンジンがかからなくなるかというと、そんなことはありません。運転したりガソリンを入れたりすることもできます。では、わざわざ面倒な相続手続きをする理由は何かと申しますと、相続手続きしなかった場合のデメリットがあるからです。
しかし、将来売却したり、乗りつぶして廃車するというときに、亡くなった方の名義のままでは手続きができませんので、いずれは手続きをしなくてはいけないときが来ます。
そのときになって他の相続人と仲が悪くなっていたり、または当時の相続人の中にお亡くなりになる方や、認知症などになる方などがいらっしゃいますと、手続きがストップしてしまいます。
手続きを先送りすると、将来手続きができなくなるリスクが高まりますので、できることならば車の所有者が亡くなった時点ですぐにお手続きを進められることをおすすめします。
この記事を担当した司法書士
司法書士法人・行政書士法人 エムコミュー
代表
小野 圭太
- 保有資格
司法書士 行政書士 民事信託士
- 専門分野
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相続・遺言・民事信託・不動産売買
- 経歴
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司法書士法人・行政書士法人エムコミューの代表を勤める。 平成25年12月に「司法書士法人・行政書士法人エムコミュー」を開業。相談者の立場に立って考える姿勢で、「ご家族の絆を一番に!」を事務所の理念 にしており、お客様の家族まで幸せを考えた提案をモットーにしている。また、相続の相談件数1200件以上の経験から相談者からの信頼も厚い。