相続税の計算
知っておきたい相続税の計算方法
ここでは相続税の計算方法について、是非知ってもらいたい点と流れをご案内します。
相続税の計算の方法として、次のステップが必要です。
- ■ステップ1 相続税の課税価格を確認する
- ■ステップ2 相続税の総額がいくらになるかを確認する
- ■ステップ3 各相続人の相続税額を計算する
相続税の計算は一般の方がご自身で正確に行うことは難しいです。
しかし、ある程度の相続税の想定金額でしたら、上記のステップの順番で相続税の計算を考えて頂ければ可能です。
ステップ1 相続税の課税価格を確認する
まずは、相続税の対象となる課税価格の額を計算します。 課税価格の計算は、次のようになります。
<課税価格の計算式>
課税価格
= 本来の相続財産+みなし相続財産-非課税財産-債務・葬式費用+相続開始前3年以内の贈与財産+相続時精算課税制度を適用した贈与財産
1. 本来の相続財産
亡くなられた方(被相続人)が相続開始の時に持っていた財産です。
現金や預貯金、土地・建物等の不動産、株式・投資信託、宝石、自動車などが該当します。
2. みなし相続財産
みなし相続財産 被相続人の死亡により、法律上は相続財産には該当しませんが、相続税の課税上相続財産と考えられる財産のことをみなし相続財産といいます。
死亡退職金、功労金、死亡保険金、生命保険契約の権利などが該当します。
3. 非課税財産
非課税財産 相続税を課税することが適当ではないとして相続税がかからない財産のことです。
墓地・仏壇等、公共事業用の財産、相続人が取得した死亡保険金や死亡退職金のうちで一定額(500万円×法定相続人の人数)。
4. 債務・葬式費用
相続税を計算する場合には、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて計算します。
未払税金、未払医療費、住宅ローン、借入金、葬式費用(お通夜・告別式、埋葬・運搬費用)など。
なお、墓地や仏壇など非課税財産にかかる未払い金、香典返戻費用や法要(初七日、四十九日など)にかかる費用は差し引くことができません。
5. 相続開始前3年以内の贈与財産
相続の開始前3年以内に被相続人から贈与された財産がある場合には、相続財産に加えて相続税の計算をする必要があります。
なお、贈与された財産は贈与時の価格で計算します。
6. 相続時精算課税制度の贈与財産
相続時精算課税制度を利用して贈与を受けていた場合には、相続財産に加えて、相続時精算課税制度の対象となった贈与財産も含めて相続税の計算する必要があります。
なお、贈与された財産は贈与時の価格で計算します。
ステップ2 各相続人の仮相続税額の合計である相続税の総額を求める
相続税の総額を計算するためには、次のプロセスが必要になります。
- ■1. 課税価格から相続税の基礎控除を差し引いて課税遺産総額を求める
- ■2. 課税遺産総額を法定相続分にて各相続人の取得額を求める
- ■3. 各相続人の取得額に応じた相続税率を掛け、その合計を求める
1. 課税遺産総額を求める
課税価格を求めたら、課税価格から基礎控除を差し引き、課税遺産総額を求めます。
課税価格―基礎控除=課税遺産総額
基礎控除は次のとおりです。
■平成26年12月31日以前に相続が開始(被相続人が死亡)した場合 課税価格の合計額-基礎控除額(5,000万円+1,000万円×法定相続人の数)=課税遺産総額
■平成27年1月1日以後に相続が開始(被相続人が死亡)した場合 課税価格の合計額-基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)=課税遺産総額
2. 法定相続分にて各相続人の取得額を計算する
課税遺産総額の計算ができたら、法定相続分にて分けたものとしてみなして、各相続人の取得額を計算します。
なお、遺産分割協議を行う場合や遺言書で遺産分割方法の指定がある場合でも、まずは法定相続分にて取得額を計算する必要があります。
例えば、平成27年12月1日に被相続人が死亡し、課税遺産総額が1億円で、相続人が配偶者と子供2人の場合には、次のとおりとなります。
1億円 × 2分の1 = 5,000万円(配偶者)
1億円 × 2分の1 × 2分の1 = 2,500万円(子供A)
1億円 × 2分の1 × 2分の1 = 2,500万円(子供B)
3. 各相続人の仮相続税額の合計である相続税の総額を求める
各相続人の取得額を計算したら、各相続人の取得額に相続税率を掛けて仮相続税額を計算します。
各相続人の仮相続税額の合計が、相続税の総額となります。
なお、相続税の税率及び控除額は次の通りです。
【相続税の税率】
【平成26年12月31日までの場合】相続税の速算表
スマートフォンの方は表をスライドしてご覧下さい。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
3億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円超 | 50% | 4,700万円 |
【平成27年1月1日以後の場合】相続税の速算表
スマートフォンの方は表をスライドしてご覧下さい。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
先ほどの事例をもとにすると次のような計算となります。
配偶者 5,000万円 × 20%―200万円 = 800万円(仮の相続税額)
子供A 2,500万円 × 15%-50万円 = 325万円(仮の相続税額)
子供B 2,500万円 × 15%-50万円 = 325万円(仮の相続税額)
上記合計額(800万円+325万円+325万円)=1450万円(相続税の総額)
ステップ3 各相続人の相続税額を計算する
ここまできたら相続税の計算もあと少しです。
上記の相続税の総額が求められただけでも相続税のおおよその金額はイメージできたかと思います。
最後に、実際に財産を取得した相続人が、取得した相続財産の割合に応じて相続税の総額から相続税の負担を求めることになります。
この際、被相続人の配偶者や未成年者などは、一定の税額控除があります。
また、相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます。)及び配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。
上記の事例を元に考えてみたいと思います。
実際に相続する分は、配偶者8000万円、子供A(成人)は1000万円、子供B(相続発生時18歳)は1000万円の場合には次のとおりとなります。
配偶者 1450万円×0.8-1160万円(配偶者控除)=0円
子供A 1450万円×0.1=145万円
子供B 1450万円×0.1-20万円(未成年者控除)=125万円
この記事を担当した司法書士
司法書士法人・行政書士法人 エムコミュー
代表
小野 圭太
- 保有資格
司法書士 行政書士 民事信託士
- 専門分野
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相続・遺言・民事信託・不動産売買
- 経歴
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司法書士法人・行政書士法人エムコミューの代表を勤める。 平成25年12月に「司法書士法人・行政書士法人エムコミュー」を開業。相談者の立場に立って考える姿勢で、「ご家族の絆を一番に!」を事務所の理念 にしており、お客様の家族まで幸せを考えた提案をモットーにしている。また、相続の相談件数1200件以上の経験から相談者からの信頼も厚い。